2006年5月1日

 

障害者雇用を促進するためのアンケート調査(報告)

 

全国障害者問題研究会茨城支部

 

   一 調査について

1 調査目的

 茨城県内の障害者雇用率1.36%(2004年6月1日現在,法定雇用率は1.8%)の現状に鑑み,障害者雇用の促進を図るために,(1)なにが障害者雇用促進の障壁となっているのか,(2)改善のための手がかりはなにか,を得ることが本調査研究の目的である。

 なお,調査を通して,調査票の回答をすることにより,同時に障害者雇用制度の理解を深めてもらうこと,さらには,障害者雇用への理解を広げることも意図した。

 

2 調査方法

(1)調査対象

 茨城県内に本社がある常用労働者56人以上(障害者の法定雇用率が適用される企業)の全ての企業(895企業,2004年6月1日現在)を対象とした。

(2)調査手続き

 茨城県内に本社がある常用労働者56人以上(障害者の法定雇用率が適用される企業)の企業で,障害者法定雇用率達成企業(367企業,2004年6月1日現在)と未達成企業(528企業,2004年6月1日現在)にそれぞれアンケート(達成企業:青色用紙,未達成企業:黄色用紙)を郵送した。アンケートの回収期間は,2005年9月1日から10月1日とした。基本的な分析の視点として,障害者雇用率達成企業と未達成企業,必要に応じて雇用障害者0人企業の回答の比較分析をする。

(3)有効調査対象

 有効回答は252企業。有効回答率は28%である(表1・1)。回答者の担当部署は表1・2のとおりである。有効回答企業の「障害者法定雇用率の達成・未達成企業別」,「従業員規模別」,「業種別」については,表1から表3の通りである。

 

表1・1 障害者法定雇用率の達成・未達成企業別

対象企業数

全企業

895企業

雇用率達成企業2)

367企業

雇用率未達成企業2)

528企業

雇用0人3)

351企業

回収企業数

回収企業

263企業1)

有効回答

252企業

102企業

150企業

80企業

回収率(%)

29%

(263/895)

28

(252/895)

28%

(102/367)

28%

(150/528)

23%

(80/351)

注1)無効回答の内容は,「企業の統合によるもの」,「アンケートの返却(受け取り拒絶を含む)によるもの」,「あて先不完全,送達不明」,「解散」,「回答時期の遅れ(1ヶ月後)」等の理由です。

 2)障害者の法定雇用率は,毎年6月1日付で報告されている。本アンケート調査のもととなるデータは,2004年6月1日現在のものである。調査の実施日は,2005年9月であり,アンケート調査実施年度のデータ(「達成・未達成」との実態)と異なる部分もある。2005年6月1日のデータを開示請求し,公表されるのが翌年(2006年)の1月であるため,本調査では2004年6月1日のデータを使用した。

 3)「雇用0人」の基準は,本アンケートの「Q4 あなたの企業は,現在,障害者を雇用していますか?」の質問に「2.雇用していない」と回答(2005年9月)した企業数を意味している。2004年6月1日現在「雇用率達成企業」だったが2005年9月現在,「障害者雇用0人企業」(2005年3月に退職)になった企業,1企業を含む。

 

表1・2 記入された方の「担当部署」一覧

大分類

中分類

具体的な担当部署

回答数

法人役員

代表取締役

 

専務取締役

 

常務取締役

 

取締役

 

人事関係部署

人事部

人事課、人事係

22

人事グループ

人事グループ、人事チーム

人事教育課

 

総務関係部署

総務部

総務課、総務グループ、総務係

137

管理部

管理課、管理グループ、管理係

22

事務部

事務課、事務長

経理部

経理課

企画部

企画課、企画グループ

庶務部

庶務課、庶務グループ

事務局

事務局、事務室、事務課、

20

注1)各社によって呼び名が異なるが、主に人事担当部署と総務担当部署に分けられる。そのほか、多種多彩な呼び名で22社が回答している。

 

表1・3 従業員規模別

従業員規模別(人)

56人〜99人

100人〜299人

300人〜499人

500人〜999人

1000人以上

未記入

有効回答企業数(A)

73企業

134企業

20企業

17企業

7企業

1企業

252企業

総企業数(B)

307企業

459企業

72企業

36企業

21企業

 

895企業

回 収 率

%(A/B)

24%

29%

28%

47%

33%

 

 

 

 表1・4 業種別

業種

農・林・魚業

鉱業

建設業

製造業

回答企業数A

4

0

5

88

総企業数B

2

0

19

349

回収率%(A/B)

200%3)

26%

25%

業種

電機・ガス・水道業

情報・通信業

運輸

卸売・小売業

回答企業数A

4

4

11

30

総企業数B

3

29

65

130

回収率%(A/B)

133%3)

14%

17%

23%

業種

金融・保険・不動産業

飲食店・宿泊業

医療・福祉

教育・学習支援業

回答企業数A

5

9

42

5

総企業数B

19

12

115

11

回収率%(A/B)

26%3)

75%

37%

45%

業種

複合サービス事業

サービス業

その他1)

未記入

合計

回答企業数A

4

34

5

5

2552)

総企業数B

25

116

 

 

895

回収率%(A/B)

16%3)

29%

 

 

 

 単位は企業(数)

注1)アンケートにはないが,集計に「その他」を加えた。回答に「その他」を書き加えた企業が複数あったため。

 2)複数(二つ)業種に〇をつける回答があった。集計では,どちらの項目にも加えた。

 3)記入された業種数をもとに回収率とした。

 

【分析】

 有効回答企業数は全企業数の28%である。達成企業(28%)も未達成企業(28%)も同様の回答率を示した。

 回答者の担当部署は,総務部(総務課,総務係,総務グループ)が多くなっている。

 従業員規模別に見ると,数値的に最も多いのは「100人〜299人」の企業で134企業,次いで「56人〜99人」の企業で73企業となっている。ただし,回収率(同規模の企業に占める割合)でみると,回収率が最も高いのは,「500人〜999人」の企業で47%(17企業),次いで「1000人以上」の企業で33%(7企業)である。

 業種別に見ると,回答数が多いのは,順に「製造業」(88企業),「医療・福祉」(42企業),「サービス業」(34企業),「卸売・小売業」(30企業)である。

(4)調査票

 調査表1・2を使用。ただし,調査票1は,「達成企業」と「未達成企業」で,異なる部分を設けた。違いは,調査用紙の色の違いとQ12とQ13の追加(未達成企業のみ)した点である。

 また,単に調査に答えていただくばかりでなく,答えながら同時に障害者雇用制度への理解が深まることを意図して,やや詳しく制度解説を加えた調査票を作成した。

 

 ア 調査表1 「障害者雇用を促進するためのアンケート調査」(なお、障害者雇用率達成企業用の用紙は青色,障害者雇用率未達成企業用の用紙は黄色にて送付した)

         

*資料1との違いは,次のとおりである。

【障害者の法定雇用率達成企業へのアンケート】(用紙は青色)

Q12 現在,5割を超える(55.5%)企業が,未達成企業となっています。それらの企業に伝えたいことはなんですか? 自由にお書きください。

 

【障害者の法定雇用率未達成企業へのアンケート】(用紙は黄色)

Q12 あなたの企業で法定雇用率(1.8%)が「未達成」なのはどうしてですか?  その理由をお聞かせください。

 

Q13 あなたの企業で法定雇用率が未達成なのは,どのような理由からですか? あてはまるものすべてに○をつけてください。

   1.職場の環境(設備など)が整備されていない

   2.障害者に合った仕事がない

   3.障害者の労働意欲や作業態度に不安がある

   4.雇っても企業にメリットがない

   5.雇入れた後のケアをする体制がない

   6.障害者雇用制度が不十分だから

   7.経営方針にない(社長の方針にない)

   8.特に理由はない

   9.その他

  (                              )

 

 イ 調査票2 「障害のある青年たちの進路開拓のための調査」

 

   二 調査結果


1 障害者雇用の実態

 

1・1 障害者雇用企業数

Q4 あなたの企業は,現在,障害者を雇用していますか?

   1.雇用している(障害者の雇用状況をお聞かせください)

   2.雇用していない

 

(回答) 表1・1 障害者雇用の有無

回答項目

1.雇用している

2.雇用していない

合計

有効回答企業数

172企業1)

80企業

252企業

注1)「未記入」であったが,下記項目への記入内容から「1.雇用している」と判断した企業(2企業)を含む。

 

【分析】

 アンケートの回答252企業のうち,障害者を「雇用している」企業は68%・172企業(68%:172/252企業),「雇用していない」企業は32%・80企業(32%:80/252企業)だった。

 

1・2 雇用されている障害者の実態

Qa あなたの企業では何人の障害者を雇用していますか?障害別に記入してください。

  身体障害(肢体不自由,内部障害,聴覚言語障害,視力障害)(  人)

  知的障害(  人)  精神障害(  人)  その他(  人)  合計(   人)

 

(結果) 表1・2・a 障害別の雇用者数と企業数

雇用障害者数

障害別

0人

1人

2〜5人

6〜10人

11〜20人

21人以上

障害者雇用企業数

身体障害

23企業

76企業

63企業1)

4企業

4企業

1企業3)

148企業

知的障害

117企業

27企業

23企業

2企業

2企業

 

54企業

精神障害

165企業

4企業

2企業

 

 

 

 6企業

その他

158企業

11企業

2企業

 

 

 

 13企業

企業総数2)

 

71企業

78企業

15企業

6企業

1企業3)

172企業

 単位は企業数

注1)「身体障害者」を「2〜5人」雇用している企業が,63企業あることを示している。

 2)アンケートの項目の「合計(   人)」に該当し,雇用している障害者数別に見た企業数の意味。

 3)「21人以上」の数値(アンケートに記載された数値は25人)は,「重度は10人でダブルカウント」(欄外の補足説明による)したとある。

 4)各項目への「未記入企業数」は記載をしなかった。

 

Qb(1)どのような雇用の形態ですか? 1.正社員(  人) 2.パート(  人)

  (2)どのくらいの労働時間(週当たり)ですか?

     a.20時間未満(  人)   b.30時間未満(  人)  

     c.40時間未満(  人)   d.45時間未満(  人)

 

表1・2・b・1 雇用形態

雇用障害者数

0人

1人

2人〜5人

6人〜10人

11人〜20人

21人以上

障害者

雇用・計

正社員

企業数

37

74

40

7

3

1

125企業

人数

 

74

104

53

43

25

299人

パート

企業数

86

37

32

6

2

 

77企業

人数

 

37

93

44

25

 

199人

注1)欄外に「契約」「嘱託」「出向」「常勤講師」等と記載する回答があった。「正社員」と「パート」との分類だけでは不十分であったか。

 

表1・2・b・2 労働時間

週当たり労働時間

企業数(%:分母は191企業)

雇用者数(%:分母は483人)

20時間未満

13企業(7%)

23人(5%)

30時間未満

26(14%)

76(16%)

40時間未満

114(60%)

307(64%)

45時間未満

38(20%)

77(16%)

合 計

191企業

483人

 

【分析】

 障害別に雇用数を見ると,身体障害者(148企業)を雇用する企業が多く,数値的には,その約3分の1強にあたる企業が,知的障害者(54企業)を雇用している。1企業で雇用している障害者の雇用数は,「2人〜5人」(78企業)が最も多く,次いで「1人企業」(71企業)となっている。それを,障害別に見ると,身体障害(76企業),知的障害(27企業),精神障害(4企業)とも「雇用数1人」企業が最も多い。

 雇用形態で見ると,正社員として雇用いるのは125企業,パートとして雇用しているのは77企業で,企業数でみれば,比率は10:6(62%:77/125)となる。社員数で見ると,正社員数は299人,パートは199人で,総社員数の約6割(60%:299/498〈299+199〉)が正社員で,約4割(40%:199/498)がパート雇用である。

 週当たりの労働時間数を見ると,最も多いのが「40時間未満」で企業の60%にあたり,次いで「45時間未満」(20%),「30時間未満」(14%)となっている。雇用者数で見ると,最も多いのは,「40時間未満」で64%,次いで「30時間未満」(16%),「45時間未満」(16%)となっている。

【先行研究との関連】

 厚生労働省「平成15(2003)年度障害者雇用実態調査」(以下,厚労省調査2003)によれば,精神障害,身体障害,知的障害の週所定労働時間は「週30時間以上」が80%を越えている(精神障害者88.7%,身体障害者89.1%,知的障害者78.6%)。本アンケート調査(「(30時間以上)40時間未満」(114企業),「45時間未満」(38企業))によって,「週30時間以上」のうちのほとんど(75%:114/152)が「40時間未満」であることが明らかとなった。

 

表1・2・b・3 先行研究・所定労働時間

 

週30時間以上

20〜30時間

20時間未満

不明

精神障害者

88.7

4.4

3.6

3.2

身体障害者

89.1

8.0

1.2

1.7

知的障害者

78.6

2.8

0.2

18.5

 厚生労働省「平成15(2003)年度障害者雇用実態調査」より

 

1・3 雇用障害者の動向

 

Qc 障害者の雇用はどのくらいの期間続いていますか?

1.1年未満(  人)   2.2年未満(  人)   3.3年未満(  人)

4.5年未満(  人)   5.10年未満(  人)  6.10年以上(  人)

 

表1・3・c 雇用期間

雇用期間

企業数/雇用人数 計(A)

%(A/B)

%(A/B’)

1年未満

企業数

36企業

14%

人数

46人

9%

2年未満

企業数

36企業

14%

人数

55人

11%

3年未満

企業数

32企業

13%

人数

47人

10%

5年未満

企業数

43企業

17%

人数

57人

12%

10年未満

企業数

46企業

18%

人数

74人

15%

10年以上

企業数

89企業

35%

人数

206人

42%

有効回答企業数

252企業(B)

 

雇用障害者の合計

485人(B’)

 

【自由記述】

☆障害者の雇用で,定着に配慮している具体的なことはどういうことですか。ソフト面及びハード面、おのおのについて記載してください。

 

表1・3・c・1 障害者雇用に伴う「職場定着」に係る配慮事項一覧

大分類

中分類

具体的な配慮内容

件数

作業遂行

出力/表示

使用している機械等の表示器(ランプ、メータ、ブザー等)の配慮

0

入力/操作具

機械等を操作するための操作具(レバー、つまみ、ボタン等)の配慮

0

手作業・処理

手作業及びそれを遂行中の各種作業情報の処理に関する配慮

0

文書処理

紙面文書の読み書き、内容理解に関わる配慮

0

安全

作業遂行時の安全に関わる配慮

1

装備/装置

障害者の能力に合わせた装備、装置への配慮

3

意思伝達

作業遂行場面における作業指示等の対面での意思伝達に関わる問題

2

生産性一般

生産性に関わる工程や機械設備に配慮

0

職場環境

作業場

作業場のスペース、レイアウト、温湿度、騒音、照明等への配慮

2

移動

段差、階段昇降等の職場内移動に関わる配慮

3

共用施設

社員の共用施設であるトイレ・更衣室・休憩室等に関わる配慮

4

人事・労務

採用時

職域開拓等に関わる配慮

3

配置

本人がもっている能力を発揮できる職場に配置

16

同等扱い

一般社員と給料面、仕事面でも同等扱い

9

意識改革

職場定着推進チームの設置

2

意識改革

職業生活相談員の設置

3

意識改革

職業生活相談員の資格取得促進

1

コミュニケーション

一般社員からの業務協力

12

コミュニケーション

人間関係の配慮

1

コミュニケーション

会社、家庭、学校(施設)が相互に連携をするなど共通理解をもつ

6

労働条件

労働時間等労働条件に関わる配慮

8

教育訓練

障害者の能力開発や職場マナー教育等に関わる配慮

2

モチベーション

仕事への心構えをはじめとする就労意欲に関わる配慮

0

福利厚生

住宅、寮、健康管理、余暇活動等の福利厚生に関わる配慮

1

福利厚生

通院時間の配慮

3

福利厚生

休みの理由の把握

1

通勤

通勤に関わる配慮(駐車場を含む)

3

注)① 同一企業から複数回答があったため、複数の項目に計上してある。

  ② 想定した配慮項目で件数が0件であっても、参考のために記載してある。

 

Qd 過去1年間(2004年4月〜2005年8月)に,障害者の採用者はありましたか?

   1.あった  2.ない  3.その他(             )

 

表1・3・d 障害者の採用(2004年4月〜2005年8月)

 

あった

ない

その他

未記入

企 業 数

53企業

(31%:53/172)

114企業

(66%:114/172)

3企業

2企業

172企業

達成企業

19企業

(36%:19/53)

79企業

(69%:79/114)

1企業

 

未達成企業

34企業

(64%:34/53)

35企業

(31%:35/114)

2企業

 

 

 

Qe 過去1年間(2004年4月〜2005年8月)に,障害者の退職者はありましたか?

   1.あった  2.ない  3.その他(             )

 

 

表1・3・e 障害者の退職者(2004年4月〜2005年8月)

 

あった

ない

その他

未記入

企 業 数

43企業

(25%:43/172)

123企業

(72%:123/172)

3企業

3企業

172企業

達成企業

20企業

(47%:20/43)

77企業

(63%:77/123)

1企業

 

未達成企業

23企業

(53%:23/43)

46企業

(37%:46/123)

2企業

 

 

【分析】

 障害者の雇用期間を見ると,「10年以上」の企業が89企業(35%)ともっとも多く,雇用者数でも206人(雇用者数全体の42%)ともっとも多くないっている。他(「1年未満」「2年未満」「3年未満」「5年未満」「10年未満」)は,いずれもほぼ10%台で,同様の比率を示している。

 障害者雇用に伴う「職場定着」に係る配慮事項(自由記述)は,「本人がもっている能力を発揮できる職場に配置」(16企業)と「一般社員からの業務協力」(12企業)との回答が多かった。

 過去1年間に障害者を採用した企業は,53企業で,回答企業全体の31%であった。また「採用があった」企業を,雇用率達成状況(「達成企業」「未達成企業」)で分けて見ると,53企業のうち64%が「未達成企業」(34企業)で,「採用がなかった」企業(114企業)のうち69%は「達成企業」(79企業)が占めていた。この数値を見る限り,障害者の新規採用は,「未達成企業」の方が,高いことがわかる。

 なお,「その他」の項目の内容は(記述)「中途障害者」等であった。

 過去1年間に障害者の退職者を出した企業は,43企業で,回答企業全体の25%であった。また,「あった」企業(43企業)を,雇用率達成状況で分けて見ると,「達成企業」(20企業)も「未達成企業」(23企業)もほぼ同数であった。「退職者がなかった」企業(123企業)のうち63%は「達成企業」(77企業)だった。この数値を見る限り,退職者は,ほぼ「達成企業」「未達成企業」で同数出ている。また,退職者を出していないのは,「未達成企業」(37%,46企業)より「達成企業」(63%,77企業)の方が多いことわかる。

 なお,「その他」の項目の内容(記述)は「死亡」等であった。

 

2 「達成企業」と「未達成企業」の比較分析

2・1 法定雇用率の周知度

 

Q3 貴社では,法律で,「56人以上の企業では1.8%(1人以上)の障害者を雇用する義務が定められている」のを知っていますか?

  1.知っている    2.知らなかった     3.その他

 

(回答) 表2・1・1 法律を知っているかどうか

質問への回答

1.知っている

2.知らなかった

3.その他

4.未記入

有効回答企業数(A)

242企業

7企業

1企業

2企業

総企業数(B)

252

252

 

 

回答率 %(A/B)

96%

3%

 

 

 

【分析】

 56人以上の企業のほとんど(92%)は,法律で障害者を雇う義務が定められていることを知っている。「知らなかった」と答えた企業は7企業である。7企業のうち,雇用率の達成状況を見ると6企業が「未達成企業」で「0人企業」(障害者を雇用していない)であり,6企業が「100人〜299人」の企業規模(雇用すべき障害者数は1人から5人)であった。

 

表2・1・2 「知らなかった」と回答した企業の特徴

雇用率状況

企業規模

産業分類

障害者雇用状況

未達成

100人〜299人

飲食店・宿泊業

雇用していない(0人企業)

未達成

100人〜299人

卸売・小売業

雇用していない(0人企業)

未達成

56人〜99人

運輸

雇用していない(0人企業)

未達成

100人〜299人

農・林・漁業

雇用していない(0人企業)

未達成

100人〜299人

農・林・漁業

雇用していない(0人企業)

未達成

100人〜299人

卸売・小売業

雇用していない(0人企業)

達成

100人〜299人

医療・福祉

雇用している(4人,身体障害)

 

2・2 雇用にあたっての配慮事項

Qf 障害者の採用にあたって,配慮したことはありますか?

  1.ある  2.特にない  3.その他(             )

  ↓(あると回答された方)

 あてはまるものすべてに,○をつけて下さい。

   1.職場での移動や作業を容易にする施設・設備・機械の改善

   2.フレックッスタイム制の導入等労働時間の弾力化

   3.通勤に配慮した住宅の確保

   4.送迎バス,専用駐車場の確保等通勤手段への配慮

   5.工程の単純化等職務内容の配慮

   6.手話通訳の配置等コミュニケーション手段への配慮

   7.業務遂行を援助する者の配置

   8.職業生活に関する相談員の配置・委嘱

   9.職業以外を含めた生活全般に関する相談員の配置・委嘱

  10.研修・教育訓練の実施等能力開発への配慮

  11.休養の確保,カウンセリングの実施等健康管理面の配慮

  12.社員への障害に対する理解促進

  13.雇用管理等に関するマニュアル等の整備

  14.通院・服薬管理等の医療上の配慮

  15.助成金等の雇用制度に関する情報の収集 

  16.外部の支援機関による訪問支援体制の確保

  17.その他(                             )

 

(回答)表2・2・f・1 採用への配慮(障害者雇用企業)

 

企  業  数1)

 

達成企業

未達成企業

(0人企業を除く)

ある

97企業2)

(56%:97/172)

52企業

(54%:51/97)

45企業

(46%:45/97)

特にない

65企業

(38%:65/172)

43

(66%:43/65)

22

(34%:22/65)

その他

2企業

未記入

8企業

172企業

 

 

注1)この質問は,Q4で「障害者を雇用している」と答えた企業が対象である。したがって,未達成企業でも「障害者雇用0人企業」は含んでいない。

 2)未記入だったが,回答内容から判断し,「ある」に加えた企業が1企業あった。

 

表2・2・f・2 採用への配慮の内容(障害者雇用企業)

項目

企 業 数1)

 

達成企業

未達成企業

(0人企業を除く)

19企業

9企業(47%:9/19)

10企業

13企業

7企業(54%:7/13)

6企業

9企業

4企業

5企業

16企業

8企業(50%:8/16)

8企業

37企業(2位)

21企業(57%:21/37)(1位)

16企業(3位)

7企業

2企業

5企業

34企業(3位)

17企業(50%:17/34)(3位)

17企業(2位)

8企業

4企業

4企業

4企業

2企業

2企業

10

8企業

3企業

5企業

11

10企業

5企業(50%:5/10)

5企業

12

45企業(1位)

19企業(42%:19/45)(2位)

26企業(1位)

13

4企業

1企業

3企業

14

17企業

8企業(47%:8/17)

9企業

15

17企業

7企業(41%:7/17)

10企業

16

7企業

3企業

4企業

17

5企業

2企業

3企業

注1)この質問は,Q4で「障害者を雇用している」と答えた企業が対象である。したがって「障害者雇用0人企業」は含んでいない。

 2)(1位)等の順位は,回答数の多い順位を示す。

 

【分析】

 障害者の採用にあたって,配慮したことが「ある」企業は,回答企業数の約半数(56%)だった。配慮したことが「ある」企業を「障害者の法定雇用率達成状況」で分けてみると,「達成企業」(52企業,54%),「未達成企業(0人企業を除く)」(45企業,46%)で,それほどの差はない。「特にない」と答えた企業は,回答企業の38%(65企業)で,「達成企業」がそのうちの66%(43企業)を占めている。

 なお,「その他」の項目内用(記述)は,「トラックのオートマ導入」等があった。

 障害者の採用にあたって配慮した具体的な事項を,障害者雇用率の達成企業別に,比較してみる。「達成企業」では,上位3項目はほぼ同数値で,「5.工程の単純化等職務内容の配慮」(21企業),「12.社員への障害に対する理解促進」(19企業),「7.業務遂行を援助する者の配置」(17企業)だった。「未達成企業(0人企業を除く)」では,第1位「12.社員への障害に対する理解促進」(26企業),第2位「7.業務遂行を援助する者の配置」(17企業),第3位「5.工程の単純化等職務内容の配慮」(16企業)である。「企業全体」では,第1位「12.社員への障害に対する理解促進」(45企業),第2位「5.工程の単純化等職務内容の配慮」(37企業),第3位「7.業務遂行を援助する者の配置」(34企業)である。

 まとめると,「達成企業」も「未達成企業」も,上位3項目の内容は同一だが,順番が異なっている。「達成企業」は,項目番号で示すと「5→12→7」に対して,「未達成企業(0人企業を除く)」では「12→7→5」の順になっている。特に,「達成企業」で「5.工程の単純化等職務内容の配慮」が高い数値となっている。

 なお,「その他」の項目内用(記述)は「現場責任者への教育」等であった。

【先行研究との関連】

 本アンケート調査では,「障害者の採用にあたって,配慮したことはありますか?」と,“採用にあたって”を条件として問いましたが,「障害者を雇用している事業主」に対して「雇用上何らかの配慮をしている」場合も先行関連研究として紹介します。

 厚生労働省「障害者雇用実態調査2003(平成15)年調査」(以下,厚労省調査2003)1)によれば,身体障害者を雇用している事業主のうち雇用上何らかの「配慮をしている」事業所の割合は68.4%(2003年)で,同様に知的障害者を雇用している事業所の割合は61.4%(2003年)であった。アンケート調査(項目「障害者の採用にあたって,配慮したことは…」)では,「ある」回答は56%と,厚労省調査2003よりやや低い数値となっている。

 厚労省調査2003によれば,配慮事項の内訳(上位3項目)は,障害別に次のとおりである。

[身体障害者]

 「配置転換等人事管理面についての配慮(54.5%)」(本アンケート項目には該当項目なし)

 「通院・服薬管理等医療上の配慮(39.4%)」(本アンケート項目14に該当)

 「駐車場,住宅の確保等通勤への配慮(25.7%)」(本アンケート項目3・4に該当)

[知的障害]

 「工程の単純化等職務内容の配慮(54.5%)」(本アンケート項目5に該当)

 「配置転換等人事管理面についての配慮(41.2%)」(本アンケート項目には該当項目なし)

 「業務遂行を指導,援助する者の配置(40.3%)」(本アンケート項目7に該当)

 これら上位項目と本アンケート調査結果との関連を見る。本アンケート調査の上位3項目のうち,厚労省調査2003の項目にない(「12.社員への障害に対する理解促進」)を除いた2項目は,厚労省調査2003の上位にランクされている。「5.工程の単純化等職務内容の配慮」は知的障害の第1位,「7.業務遂行を援助する者の配置」は知的障害の第3位である。逆に,2003年調査で上位を示した項目「配置転換等人事管理面についての配慮」(身体障害では第1位,知的障害では第2位)は,本アンケート調査の項目にない。したがって,本アンケート調査の結果は,先行研究の結果と矛盾しない。その上で,新たに,配慮事項の上位に「12.社員への障害に対する理解促進」の可能性があることを提起した。

注1)厚生労働省「平成15(2003)年度障害者雇用実態調査」(以下,厚労省調査2003)

 

2・3 障害者の採用理由

Qg 障害者を採用した理由をお聞かせください。

   1.法律で定められているから

   2.企業の社会的責任として 

   3.企業にプラスだから。(どういう点がプラスですか?お書きください。)

   4.採用すると各種の助成制度があるから

   5.会社の求めるニーズに適した人材だったから

   6.その他(                            )

 

表2・3・g 障害者を採用した理由(障害者雇用企業)

項目

企業数1)

 

達成企業

未達成企業

(0人企業を除く)

61企業(35%:61/172)(2位)

32企業(52%:32/61)(2位)

29企業(2位)

93企業(54%:93/172)(1位)

49企業(53%:49/93)(1位)

44企業(1位)

5企業

3企業

2企業

7企業

4企業

3企業

47企業(27%:47/172)(3位)

30企業(64%:30/47)(3位)

17企業(36%:17/47)(3位)

16企業

12企業(75%:12/16)

4(25%)

 計

172企業

 

 

注1)この質問は,Q4で「障害者を雇用している」と答えた企業が対象である。したがって「障害者雇用0人企業」は含んでいない。

 2)(1位)等の順位は,回答数の多い順位を示す。

 3)複数回答なので,%の合計は100%を超える。

 

【分析】

 障害者を採用した理由を,障害者の雇用率達成状況別に見る。

 「達成企業」では,第1位「2.企業の社会的責任として」(49企業),第2位は「1.法律で定められているから」(32企業),第3位は「5.会社の求めるニーズに適した人材だったから」(30企業)である。「未達成企業」でも,第1位「2.企業の社会的責任として」(44企業),第2位は「1.法律で定められているから」(29企業),第3位は「5.会社の求めるニーズに適した人材だったから」(17企業)である。「企業全体」でも,同様に第1位「2.企業の社会的責任として」(93企業,41%)で全企業の41%を占め,第2位は「1.法律で定められているから」(61企業,27%),第3位は「5.会社の求めるニーズに適した人材だったから」(47企業,21%)である。

 「達成企業」と「未達成企業(0人企業を除く)」とも,上位3項目の内容と順番とも同一だった。

 「6.その他」で「達成企業」が75%(12企業)に対し「未達成企業」が25%だった。「6.その他」の項目(記述)には,「雇用中に障害者になった」と回答した企業が8企業あった。「5.会社の求めるニーズに適した人材だったから」で「達成企業」が64%(30企業)に対し「未達成企業」が36%(17企業)と「達成企業」占める割合が多かった。

 なお,「3.企業にプラスだから」の内容(記述)は,「一般のパート・アルバイトにも良い刺激になる」「企業のイメージアップ」「マッサージ等の専門職が必要である」「賃率が低い」「給料が安い」「個々の従業員が他人をいたわる気持ちを持ってもらいたい」等であった。

 

2・4 利用・協力機関

Qh 募集・採用する際に,利用したり協力を求めた機関等をお知らせください。(2つ以内に〇をつけてください。)

  1.ハローワーク(公共職業安定所)  2.茨城障害者職業センター

  3.茨城県雇用開発協会        4.茨城県南部地域障害者雇用支援センター

  5.就業・生活支援センター(水戸地区障害者就業・生活支援センター,慶育会障害者就業生活支援センターなかま) 

  6.学校・各種学校     7.福祉施設     8.医療機関     9.障害者団体

 10.知人         11.その他(        )

 

表2・4・h 利用機関(障害者雇用企業)

項目

企業数1)

 

達成企業

未達成企業2)

  123企業(1位)

(72%:123/172)

  70企業(1位)

  53企業(1位)

14企業

5企業

   9企業(2位)

8企業

2企業

6企業

3企業

2企業

1企業

2企業

1企業

1企業

  29企業(2位)

(17%:29/172)

  22企業(2位)

 7企業(3位)

7企業

5企業

2企業

2企業

1企業

1企業

1企業

0企業

1企業

10

  23企業(3位)

(13%:23/172)

  17企業(3位)

   6企業(4位)

11

16企業

10企業

6企業(4位)

注1)この質問は,Q4で「障害者を雇用している」と答えた企業(172企業)が対象である。したがって,未達成企業でも「障害者雇用0人企業」は含んでいない。

 2)未達成企業中,0人企業を含まない70企業。

 3)集計には,2つ以上に丸をつけた結果も含んでいる。

 

【分析】

 各企業において,募集・採用する際に,利用したり協力を求めた機関を,障害者雇用率達成状況別に見る。

 「達成企業」は,第1位「1.ハローワーク(公共職業安定所)」(70企業),第2位「6.学校・各種学校」(22企業),第3位「10.知人」(17企業)である。「未達成企業」は,第1位「1.ハローワーク(公共職業安定所)」(70企業),第2位「2.茨城障害者職業センター」(9企業),第3位「6.学校・各種学校」(7企業)である。なお,第3位と1企業違いで「10.知人」(6企業)と「11.その他」(6企業)が続いている。「企業全体」では,「1.ハローワーク(公共職業安定所)」が群をぬいて,企業の78%が利用している。次いで,割合的には2割未満の利用になるが,「6.学校・各種学校」(29企業,17%),「10.知人」(23企業,13%)である。

 「達成企業」と「未達成企業(0人企業は除く)」を見ると,同一の項目が選択されていた。ただ,「未達成企業(0人企業は除く)」は,「達成企業」と比べて相対的に「2.茨城障害者職業センター」の利用が高くなっている。

 「11.その他」の内容(記述)は,「市福祉事務所」「求人広告(4企業)」「職員」「NPO」「機関を利用していない」等であった。

【先行研究との関連】

 厚労省調査2003では,身体障害者・知的障害者とも「募集・採用する際に利用したり協力を求めた関係機関」は,「公共職業安定所」(肢体障害者91.9%,知的障害者79.5%)が群を抜いて,次に「学校・各種学校」(肢体障害者21.5%,知的障害者36.5%)であった。この結果は,本アンケート調査と同様の結果(矛盾しない)である。

 他の先行研究「企業の障害者雇用に関する意識調査」1)の「障害者を雇用する際,どこから紹介を受けられましたか?」の回答で,第1位「自社採用」(50.7%),第2位「公共職業安定所」(46.5%),第3位「各種学校」(21.%)で,「自社採用が公共職業安定所を上回り,障害者採用に対する自助努力がうかがえる」としている。これは,上位に新たに「自社採用」が入る可能性を示してはいるが,本アンケート調査結果を否定するものではない。

 1)株式会社パソナ「企業の障害者雇用に関する意識調査」(調査期間:2002年11月8日〜25日,サンプル194社で従業員規模1000人以上が46.9%を占めている)

 

2・5 担当者の配置

Qi あなたの企業では,特別に配置(選任)している担当者がいますか?

   1.いる   2.いない

    ↓(1と回答した方)

   あてはまるものに〇をつけてください。

   1.障害者雇用推進者    2.障害者職業生活相談員    3.その他(       )

 

表2・5・i・1 配置(選任)の担当者(障害者雇用企業)

項 目

企業数1)

 

達成企業

未達成企業1)

(0人企業を除く)

1.いる

49企業(28%,49/172)

28企業

(28%:28/101)2)

(57%:28/49)3)

21企業

(30%:21/71)

(43%:21/49)

2.いない

119企業(69%:119/172)

71企業

(70%:71/101)

(60%:71/119)

48企業

(68%:48/71)

(40%:48/119)

未記入

4企業

2企業

2企業

172企業

101企業

(59%:101/172)

71企業

(41%:71/172)

注1)この質問は,Q4で「障害者を雇用している」と答えた企業が対象である。したがって「障害者雇用0人企業」は含んでいない。

 2)「達成企業」中の「いる」と答えた割合(28%)を示す。他も同様。

 3)「いる」と答えた企業の中の「達成企業」の割合(57%)を示す。他も同様。

 

表2・5・i・2 配置(選任)の担当者の具体名(障害者雇用企業)

項   目

企業数1)

 

達成企業

未達成企業1)

(0人企業を除く)

1.障害者雇用推進者

32企業

(65%,32/49)

20企業

(71%,20/28)

12企業

(57%,12/21)

2.障害者職業生活相談員

12企業

6企業

6企業

3.その他

4企業

1企業

3企業

未記入

4企業

3企業

1企業

「いる」企業数

49企業

28企業

21企業

注1)この質問は,Q4で「障害者を雇用している」と答えた企業が対象である。したがって「障害者雇用0人企業」は含んでいない。

 2)「1」と「2」に○をつけた企業が2企業,「1」「2」「3」に〇をつけた企業が1企業あった。

 3)%は,回答企業数に対する割合を示した。

 

【分析】

 特別に配置(選任)している担当者が「いる」企業は,全体の28%(49企業/172企業)であった。この数値は,「達成企業」(28%)でも,「未達成企業(0人企業を除く)」(30%)でも同様な値であった。「いない」企業は,約7割(69%)あった。

 「いる」と答えた企業のうち「1.障害者雇用推進者」は65%(32企業)だった。「2.障害者職業生活相談員」は12企業だった。「達成企業」と「未達成企業(0人企業を除く)」とを比べると,「達成企業」の方が,相対的に「1.障害者雇用推進者」の占める割合が高いことがうかがえる。

 ところで,『障害者の雇用支援のために―事業主と障害者のための雇用ガイド―平成16年』(厚生労働省,独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構)によれば,「1.障害者雇用推進者」「2.障害者職業生活相談員」について,下記のように説明されている。

 1 障害者雇用推進者

   従業員を56人以上雇用する事業所では障害者雇用推進者を選任するよう務めなければなりません。

 2 障害者生活相談員

   身体障害者又は知的障害者である常用労働者(重度障害者である短時間労働者を含む。)及び精神障害者であって職場適応訓練を終了し,当該訓練を委託された事業主に雇用されている者(以下「障害者」という)を5人以上雇用する事業所では,障害者の職業生活全般にわたる相談,指導を行う障害者職業生活相談員を選任する必要があります。

 上記の記述に従えば,「1.障害者雇用推進者」は,「56人以上の企業」では「障害者雇用推進者を選任するよう務めなければならない」。とすると,回答企業全体が「選任に努める」必要があることとなる。ところが,「「1.障害者雇用推進者」が「いる」と答えた企業は32企業であった。また,仮にアンケートに答えた障害者を雇用する企業全体を母数(172企業)とすれば,19%(32/172)となり,本来対象となるべき企業の2割未満にしか,障害者雇用推進者が選任されていないことになる。

 

表2・5・i・3 障害者雇用数と企業数1)

雇用障害者数

(人)

1人

2人〜4人

5人

6人〜10人

11人〜20人

21人以上

企業数(企業)

71企業

67企業

11企業

15企業

6企業

1企業

障害者生活相談員

対象企業

 

33企業・36%(12企業/33企業)

注1)「表2・2・a 障害別の雇用者数と企業数」から作成

 

 次に,上記の記述に従えば,障害者生活相談員は,「障害者を5人以上雇用する」企業に「選任する必要」がある。5人以上の障害者を雇っている企業数は33企業ある。したがって,障害者生活相談員をおいている企業は12企業であるから,36%(12/33企業)で選任されていることとなる。いずれにせよ,低い数値である。

 なお,「3.その他」の項目内容(記述)は,「総務部で担当」「職場担当者(班長)」「管理部長」等であった。

 

2・6 障害者雇用の問題

Qj 実際に障害者を雇用して,現在,どんな問題がありますか? お書きください。

   1.ない

   2.ある(具体的にお書きください)

 

表2・6・j 障害者を雇用しての問題点の有無

項目

企業数

達成企業数

未達成企業数

(0人企業を除く)

1.ない

125企業

(73%:125/172)2)

76企業

(75%:76/101)

49企業

(69%:49/71)

2.ある

35企業

(20%:35/172)

18企業

(18%:18/101)

17企業

(24%:17/71)

3.その他

12企業

7企業

5企業

172企業

101企業

71企業

注1)「1.ない」と「2.ある」の両方に〇をつけた企業が1企業あった。両方にカウントした。

 2)%は,企業数の中で占める「ない」の割合を示す。他も同様。

 

【分析】

 障害者を雇用しての問題点の有無について,障害者雇用率の達成状況別に見ると,「達成企業」の75%(76企業)が「ない」と答え,「未達成企業」の69%(49企業)が「ない」と答えている。回答企業全体では,73%の企業が,障害者を雇用して「問題がない」と答えている。「問題がある」と回答した企業は,回答企業の20%(35企業)であった。

 

3 「達成企業」と「未達成企業(0人企業を含む)」と「0人企業」の比較分析

3・1 担当部署

Q5 あなたの企業で障害者雇用を担当する部署はありますか?

   1.ある 具体的に部署名をお書きください

   2.ない

   3.その他

 

表3・5 担当部署の有無

項 目

企業数

達成企業

未達成企業

(0人企業を含む)

0人企業

 1.ある

109企業

(44%:109/250)1)

40企業

(39%:40/102)

69企業

(47%:69/148)

31企業

(40%:31/78)

 2.ない

133企業

(53%:133/250)

61企業

(60%:62/102)

72企業

(49%:72/148)

41企業

(53%:41/78)

 3.その他

8企業

1企業

7企業

6企業

250企業

102企業

148企業

78企業

注1)企業数の中で「ある」と回答した割合を示す。他も同様。

 

【分析】

 障害者雇用を担当する部署は,各企業の44%が「ある」と答えた。数値で見る限り,達成企業の設置率(39%)よりも,未達成企業の設置率(47%)の方が,高くなっている。

 

3・6 雇用を増やすための条件

Q6 あなたの企業で,さらに障害者の雇用を増やすためには,どのようなことが必要だとお考えですか?

   あてはまるものすべてに,○をつけてください。

   1.社内において障害についての理解を得る

   2.採用時に適性・能力を充分に把握する  

   3.会社内に適当な仕事を作る

   4.通勤上の配慮をする

   5.勤務時間の配慮をする

   6.配置転換等人事管理面での配慮をする

   7.業務内容・労働時間等に関し家族の理解を得る

   8.施設・設備・機器の改善をする

   9.職場の安全面の配慮をする

  10.職場定着上の問題について関係機関等外部の支援を得る

  11.職場復帰のための配慮する

  12.仕事以外の生活面等への対応をする

  13.雇用継続が困難な場合の受け皿がある

  14.労働組合の理解と合意を得る

  15.その他(                          )

 

表3・6・a 障害者の雇用を増やすために必要なこと

項目

企業数

(対象企業252企業)

達成企業

 

未達成企業

(0人企業を含む)

0人企業

118企業②

(47%:118/252)2)

41企業②

(37%:41/118)

77企業②

(65%:77/118)

44企業② 

(37%:44/118)

157企業①

(64%:157/252)2)

61企業①

(39%:61/157)3)

96企業①

(61%:96/157)

55企業① 

(35%:44/157)

93企業④

(37%:93/252)2)

24企業③

(26%:24/93)

69企業③

 (74%:69/93)

38企業③ 

(41%:38/93)

44企業

17企業

27企業

19企業

59企業

20企業 

(34%:20/59)

39企業

18企業

44企業

16企業

28企業

15企業

47企業

19企業

28企業

19企業

80企業

24企業③

(30%:24/80)

56企業

33企業

103企業③ 

(41%:103/252)2)

41企業② 

(40%:41/103)

62企業④ 

(60%:62/103)

38企業③ 

(37%:38/103)

10

26企業

7企業

19企業

9企業

11

12企業

5企業

7企業

3企業

12

14企業

4企業

10企業

4企業

13

12企業

3企業

9企業

6企業

14

5企業

0企業

5企業

2企業

15

17企業

6企業

11企業

6企業

 注1)①②③④の記号は,回答数の多い順位を示す。

  2)企業数に占める該当項目を選択した企業の割合を示す。

  3)該当項目を選択した企業の中の「達成企業」の割合を示す。他も同様。

 

3・7 関係機関の支援

Q7 障害者雇用促進のために,関係機関から支援してほしいことはなんですか?

   あてはまるものすべてに〇をつけてください。

   1.障害者雇用に関する広報・啓発

   2.職場と家庭の連絡調整

   3.企業での実習や就労に対する家族の理解の促進

   4.生活面を含めた相談援助

   5.障害者雇用支援設備・施設・機器の設置のための助成・援助

   6.ジョブコーチ等による定期的な職場訪問など職場適応・職場定着指導

   7.具体的な雇用ノウハウについて相談できる窓口の設置

   8.雇用管理に役立つマニュアル,研修等の提供

   9.職場内での業務支援者の配置に対する助成

  10.障害者に対する能力向上のための訓練の実施

  11.職場復帰のための訓練の実施

  12.障害者の退職後の受け皿に対する支援

  13.余暇活動の企画や場の提供

  14.障害者雇用の助成金の期間の延長

  15.助成金受給手続きの簡略化

  16.その他(                             )

 

表3・7・a 関係機関から支援してほしいこと

252企業,(そのうちの未記入企業21企業,回答企業231企業)

項目

企業全体

 

達成企業

未達成企業

(0人企業を含む)

0人企業

57企業

16企業

(28%:16/57)

41企業

23企業③

28企業

10企業

18企業

8企業

38企業

17企業

21企業

11企業

41企業

12企業

29企業

13企業

91企業①

24企業③

(26%:24/91)

67企業①

44企業①

43企業

10企業

33企業

18企業

58企業

15企業

(26%:15/58)

43企業③

28企業②

51企業

17企業

(33%:17/51)

34企業

21企業

60企業

20企業

(33%:20/60)

40企業

22企業

10

69企業③

26企業②

(37%:26/69)

43企業③

23企業③

11

15企業

3企業

12企業

7企業

12

24企業

10企業

14企業

9企業

13

6企業

2企業

4企業

2企業

14

51企業

19企業

(37%:19/51)

32企業

15企業

15

77企業②

30企業①

(39%:30/77)

47企業②

21企業

16

10企業

6企業

4企業

2企業

 注1)①②③④の記号は,回答数の多い順位を示す。

  2)%は,該当項目を選択した企業の中の「達成企業」の割合を示す。他も同様。

 

【分析】

 障害者の雇用を増やすために必要な条件は,障害者雇用率達成状況別に見る。

 「達成企業」では,第1位「2.採用時に適性・能力を充分に把握する」(61企業),第2位は同数で「1.社内において障害についての理解を得る」(41企業)と「9.職場の安全面の配慮をする」(41企業),第3位も同数で「3.会社内に適当な仕事を作る」(24企業)と「8.雇用管理に役立つマニュアル,研修等の提供」(24企業)であった。

 「未達成企業」では,第1位「2.採用時に適性・能力を充分に把握する」(96企業),第2位「1.社内において障害についての理解を得る」(77企業),第3位は「3.会社内に適当な仕事を作る」(69企業)であった。なお,第4位に「9.職場の安全面の配慮をする」(62企業)が続いている。

 0人企業」では,第1位「2.採用時に適性・能力を充分に把握する」(55企業),第2位「1.社内において障害についての理解を得る」(44企業),第3位は同数で「3.会社内に適当な仕事を作る」(38企業)と「9.職場の安全面の配慮をする」(38企業)であった。

 「企業全体」では,第1位「2.採用時に適性・能力を充分に把握する」(64%),第2位「1.社内において障害についての理解を得る」(48%),第3位「9.職場の安全面の配慮をする」(42%),第4位「3.会社内に適当な仕事を作る」(38%)であった。

 まとめると,「達成企業」「未達成企業(0人企業を含む)」「0人企業」とも,上位4項目は同じ項目であった。ただ,「達成企業」では,相対的に「9.職場の安全面の配慮をする」が高い順位を示した。

 なお,「15.その他」の項目の内容(記述)は,「景気の拡大,業務拡大」(2企業),「無理」等の意見があった。

 障害者雇用促進のために,関係機関から支援してほしいことを,障害者雇用率達成状況別に見る。

 「達成企業」は,第1位「15.助成金受給手続きの簡略化」(30企業),第2位「10.障害者に対する能力向上のための訓練の実施」(26企業),第3位「5.障害者雇用支援設備・施設・機器の設置のための助成・援助」(24企業)だった。

 「未達成企業」は,第1位「5.障害者雇用支援設備・施設・機器の設置のための助成・援助」(67企業),第2位「15.助成金受給手続きの簡略化」(47企業),第3位は同数で「10.障害者に対する能力向上のための訓練の実施」(43企業)と「7.具体的な雇用ノウハウについて相談できる窓口の設置」(43企業)であった。

 0人企業」では,第1位「5.障害者雇用支援設備・施設・機器の設置のための助成・援助」(44企業),第2位「7.具体的な雇用ノウハウについて相談できる窓口の設置」(28企業),第3位は同数で「10.障害者に対する能力向上のための訓練の実施」(23企業)と「1.障害者雇用に関する広報・啓発」(23企業)だった。

 「企業全体」では,第1位「5.障害者雇用支援設備・施設・機器の設置のための助成・援助」(91企業,26%:91/231),第2位「15.助成金受給手続きの簡略化」(77企業),第3位「10.障害者に対する能力向上のための訓練の実施」(69企業)であった。

 まとめると,「達成企業」も「未達成企業」も,ほぼ同様の項目「5,15,10」である。ただし,「達成企業」と「未達成企業」を比べて,「達成企業」の第1位は「15.助成金受給手続きの簡略化」となって,相対的に高い位置づけにあることがわかる。逆に,「未達成企業」では,第1位は「5.障害者雇用支援設備・施設・機器の設置のための助成・援助」で,相対的に高い位置づけになっている。「0人企業」では,相対的に「15.助成金受給手続きの簡略化」の項目が低くなり,新たに「1.障害者雇用に関する広報・啓発」が上位に入っている。

 なお,「16.その他」の項目の内容(記述)は,「求職者情報の提供」「障害者雇用の機会の拡大」「法で勤務時間の短縮を定めてほしい」等であった。

【先行研究等との関連】

表3・7・b 先行研究と本アンケートで上位を占めた項目

先行研究の上位項目

 

本アンケートの上位項目

「会社内に適当な仕事があるか」

「職場の安全面の配慮が適切にできるか」

「障害者雇用支援設備・施設・機器の設置のための助成・援助」

「採用時に適性・能力を十分把握できるか」

 

「障害者に対する能力向上のための訓練の実施」

☆「障害者雇用に関する広報・啓発」

☆「具体的な雇用ノウハウについて相談できる窓口の設置」

 

 

「3.会社内に適当な仕事を作る」

「9.職場の安全面の配慮をする」

「5.障害者雇用支援設備・施設・機器の設置のための助成・援助」

「2.採用時に適性・能力を充分に把握する」

「10.障害者に対する能力向上のための訓練の実施」

*「1.社内において障害についての理解を得る」

*「15.助成金受給手続きの簡略化」

注1)⇔は,同一の項目であることを示す。

 2)☆は,本アンケートでも取り上げている項目だが上位に入っていない。

 3)*は,独自な項目であることを示す。

 

 厚生労働省「障害者雇用実態調査2003(平成15)年調査」1)の「雇用するにあたっての課題」と「関係機関に期待する取組み」の上位項目を障害別(肢体障害者,知的障害者)に記し,本アンケート調査で,「障害者の雇用を増やすために必要な条件」,「障害者雇用促進のために,関係機関から支援してほしいこと」の上位との関係を見る。

 「1.社内において障害についての理解を得る」と「15.助成金受給手続きの簡略化」は,厚労省調査2003年の選択項目に含まれていない。したがって,本アンケートの上位項目(ただし,先行研究に含まない項目は除く)は,先行研究の上位項目と一致することとなり,本アンケート調査の妥当性を支持する。

 また,「15.助成金受給手続きの簡略化」については,1991年の調査報告2)で「簡略にすれば雇用が進むか?」との問いに「そう思う」と49.2%の企業(604企業中の297企業,「そう思わない」は26.8%で12企業)が回答している。

 

*先行研究文献

1)厚生労働省「平成15(2003)年度障害者雇用実態調査」(以下,厚労省調査2003)

2)NHK厚生文化事業団『精神薄弱の人たちの就労と社会参加に関する関係者の意識調査』(報告書)1991年12月

 

3・8 各種助成制度の利用状況

Q8 各種援助制度等についておたずねします。貴社でこれまで利用したことのある制度には〇をつけてください。また,知らない制度に×をつけて下さい。

 1.職場適応訓練等

 2.職場適応援助者(ジョブコーチ)

 3.障害者試行雇用事業(トライアル雇用)

 4.雇用管理サポート事業

 5.就労支援機器の貸出事業

 6.特例子会社制度

 7.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)

 8.障害者雇用調整金・報奨金

 9.障害者雇用納付金制度に基づく助成金

10.障害者雇用調整金・報奨金障害者雇用継続援助事業に基づく助成金

11.障害者を雇用する事業所に係る税制上の優遇措置

12.重度障害者雇用促進融資

 

表3・8・a 各種援助制度の利用有無

項目

企業数

有効回答252企業

達成企業

102企業

未達成企業

(0人企業を含む)

150企業

0人企業

80企業

利用した

知らない

利用した

知らない

利用した

知らない

利用した

知らない

6企業

70企業

2企業

27企業

4企業

43企業

1企業

28企業

13企業

69企業

3企業

30企業

10企業

39企業

2企業

27企業

27企業

66企業

11企業

30企業

16企業

36企業

1企業

28企業

0

87企業③

0

40企業

▼②

0

47企業

0

32企業

2企業

97企業

▼②

2企業

34企業

0企業

63企業

▼②

0

41企業

▼③

1企業2)

112企業

▼①

(112/252)

0

44企業

▼①

43%

(44/102)

1企業2)

68企業

▼①

45%

(68/150)

1企業2)

45企業

▼①

56%

(45/80)

64企業

25%

(64/252)

46企業

35企業

34%

(35/102)

17企業

29企業

19%

(29/150)

29企業

7企業

9%

(7/80)

27企業

24企業

52企業

13企業

22企業

11企業

30企業

4企業

23企業

21企業

60企業

11企業

26企業

10企業

34企業

3企業

25企業

10

13企業

64企業

8企業

26企業

5企業

38企業

1企業

29企業

11

4企業

80企業

1企業

35企業

3企業

45企業

1企業

29企業

12

1企業

97企業

▼②

0

39企業

▼③

1企業

58企業

▼③

1企業

43企業

▼②

 注1)①②③④の記号は,回答数の多い順位を示す。▼①は,ワーストの順位を示す。

  2)「1企業」は,同一企業で「未達成企業」で「0人企業」を示している。項目6の内容は「6.特例子会社制度」(茨城にはまだない)についての設問であり,記入の誤りであると推定されるが,統計上は載せておいた。

 

【分析】

 各種援助制度等について,「利用したことのある制度」と「知らない制度」を聞いたところ,「企業全体」で「利用したことのある制度」の上位3位は,1位「7.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)」(64企業,25%:64/252),2位「3.障害者試行雇用事業(トライアル雇用)」(27企業),3位「8.障害者雇用調整金・報奨金」(24企業)であった。

 反対に,「知らない制度」のワースト3は,ワースト1位「6.特例子会社制度」(112企業,44%:112/252),ワースト2位「12.重度障害者雇用促進融資」(97企業)と「5.就労支援機器の貸出事業」(97企業),ワースト3位「4.雇用管理サポート事業」(87企業)であった。ちなみに,茨城県内の特例子会社数は0(2005年12月19日現在,茨城労働局への聞き取り)である。

 「利用したことのある制度」と「知らない制度」を比較して,「利用したことのある」方が多かった制度は,「7.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)」(ある:64企業,ない:47企業)であった。さらに,全体的傾向としては,「利用したことのある制度」の項目は30企業以下で,数値にもばらつきがある(制度の利用にばらつきが見られる)のに対して,「知らない制度」はほぼ50企業以上が「知らない制度」として答え(ただし,項目7を除く)ている。各種助成制度の存在が,全体に周知されていないことが窺える。

 「達成企業」の「利用したことのある制度」の上位3位は,1位「7.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)」(35企業,達成企業の34%),2位「8.障害者雇用調整金・報奨金」(13企業),第3位は「3.障害者試行雇用事業(トライアル雇用)」(11企業)と「9.障害者雇用納付金制度に基づく助成金」(11企業)であった。「知らない制度」のワースト3は,ワースト1位「6.特例子会社制度」(44企業,達成企業の43%),ワースト2位「4.雇用管理サポート事業」(40企業),第3位「12.重度障害者雇用促進融資」(39企業)であった。

 「未達成企業(0人企業も含む)の「利用したことのある制度」の上位3位は,1位「7.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)」(29企業,未達成企業の19%),2位「3.障害者試行雇用事業(トライアル雇用)」(16企業),3位「8.障害者雇用調整金・報奨金」(11企業)であった。「知らない制度」のワースト3は,ワースト1位「6.特例子会社制度」(68企業,未達成企業の45%),ワースト2位「5.就労支援機器の貸出事業」(63企業),ワースト3位「12.重度障害者雇用促進融資」(58企業)であった。

 0人企業」では,「利用したことのある制度」はいずれも低い数値であったが,「7.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)」は,8企業あった。「知らない制度」の数値は全体的に高い数値を示したが,特に「企業全体」と同様に項目「6,12,5」が高い数値を示した。

 「達成企業」と「未達成企業」を比較すると,「達成企業」の上位は「7→8→3・9」,「未達成企業」では「7→3→8」であり,選択された項目はほぼ同じ(7,8.3)だが,「達成企業」では,相対的に「8.障害者雇用調整金・報奨金」と「9.障害者雇用納付金制度に基づく助成金」が高い数値を示した。逆に下位は「6→4→12」(達成企業)と「6→5→12」(未達成企業)となり,「達成企業」では「4.雇用管理サポート事業」が,「未達成企業」では「5.就労支援機器の貸出事業」が,独自に上位に入った。

 

3・9 関係機関の利用状況

Q9 障害者雇用の関係機関(県内)についておたずねします。貴社でこれまで利用したことがある機関に〇をつけてください。また,利用したことがない機関に×をつけて下さい。

 1.ハローワーク(公共職業安定所)

 2.茨城障害者職業センター(所在地 友部町鯉渕)

 3.茨城県雇用開発協会(所在地 水戸市城南)

 4.茨城県南部地域障害者雇用支援センター(所在地 土浦市真鍋新町)

 5.水戸地区障害者就業・生活支援センター(所在地 水戸市赤塚)

 6.社会福祉法人慶育会障害者就業・生活支援センターなかま(所在地 下館市茂田北原)

 

表3・9・a 関係機関の利用の有無              単位は企業

項目

企業全体

達成企業

未達成企業

(0人企業を含む)

0人企業

 

ある

ない

ある

ない

ある

ない

ある

ない

192①

27

76①

12

116①

15

57①

11

25③

146

12③

45

13③

101

3③

57

70②

117

32②

36

38②

81

15②

49

3

165

2

54

1

111

1

60

3

165

0

55

3

110

1

61

3

163

3

51

0

112

0

61

 注)①②③④の記号は,回答数の多い順位を示す。

 

【分析】

 障害者雇用の関係機関(県内)について,「利用したことがある機関」と「利用したことがない機関」について,「達成企業」「未達成企業(0人企業を含む)」で見る。

 「達成企業」で「利用したことがある機関」の上位は,第1位「1.ハローワーク(公共職業安定所)」(76企業),第2位「3.茨城県雇用開発協会」(32企業),第3位「2.茨城障害者職業センター」(12企業)であった。逆に,利用の少ない機関は,ほぼ同一の数値(50企業台)で「5.水戸地区障害者就業・生活支援センター」「4.茨城県南部地域障害者雇用支援センター」「6.社会福祉法人慶育会 障害者就業・生活支援センターなかま」であった。

 「未達成企業」の上位も,第1位「1.ハローワーク(公共職業安定所)」(116企業),第2位「3.茨城県雇用開発協会」(38企業),第3位「2.茨城障害者職業センター」(13企業)であった。逆に,利用の少ない機関も同様に,ほぼ同一の数値(110企業台)で「5.水戸地区障害者就業・生活支援センター」「4.茨城県南部地域障害者雇用支援センター」「6.社会福祉法人慶育会 障害者就業・生活支援センターなかま」であった。

 0人企業」の上位も,第1位「1.ハローワーク(公共職業安定所)」(57企業),第2位「3.茨城県雇用開発協会」(15企業)であった。逆に,利用の少ない機関も同様に,ほぼ同一の数値(60台)で「5.水戸地区障害者就業・生活支援センター」「4.茨城県南部地域障害者雇用支援センター」「6.社会福祉法人慶育会 障害者就業・生活支援センターなかま」であった。

 「未達成企業」と「達成企業」を比べると,同一の機関と順番を示した。

 まとめると,①利用企業の多い3機関(「1.ハローワーク(公共職業安定所)」(192企業),「3.茨城県雇用開発協会」(70企業),「2.茨城障害者職業センター」(25企業))と,利用企業が少ない3機関(「4.茨城県南部地域障害者雇用支援センター」「5.水戸地区障害者就業・生活支援センター」「6.社会福祉法人慶育会障害者就業・生活支援センターなかま」)に利用頻度の分化が見られる。利用度の高い3機関を見ると,群をぬいて「1.ハローワーク(公共職業安定所)」(192企業)が多く,次に「3.茨城県雇用開発協会」(70企業)が続き,相対的に「2.茨城障害者職業センター」(25企業)が多くなっている。「利用したことがある機関」と「利用したことがない機関」を比較すると,「ない」より「ある」との答えが多い機関は,「「1.ハローワーク(公共職業安定所)」(企業全体:192>27,達成企業:77>12,未達成企業:115>15,0人企業:58>11)のみであった。

 

3・10 障害者雇用に必要なこと

Q10 各企業が今後,障害者雇用を促進するために,今もっとも必要と思われるもの2つ以内に〇をつけてください。

   1.職場適応援助者(ジョブコーチ)を充実(増員等)させる

   2.試行(トライアル)雇用の充実を図る

   3.特例子会社制度の活用を図る

   4.障害者就業・生活支援センターの増設をする

   5.障害者雇用納付金の額を最低賃金を上回る額とする

   6.自治体の入札企業の対象企業は,法定雇用率の達成を条件とする

   7.法定雇用率未達成企業名を公表する

   8.ITを利用した職業能力の開発を図る

   9.職業能力開発校に障害者の受け入れ促進を図る

  10.特定求職者雇用開発助成金の額を増額する

  11.企業内の職務の見直しや職域の拡大と施設設備の改善を図る

  12.在宅就労障害者など,新たな雇用創出(障害者雇用率の対象)をする

  13.その他(                              )

 

表3・10 障害者雇用の促進に必要な条件

項目

企業全体

達成企業

未達成企業

(0人企業を含む)

0人企業

1

48企業③

14企業

34企業③

19企業③

2

82企業①

27企業①

55企業①

26企業①

3

6企業

5企業

1企業

0企業

4

25企業

9企業

16企業

13企業

5

8企業

4企業

4企業

3企業

6

26企業

15企業

11企業

4企業

7

8企業

7企業

1企業

0企業

8

31企業

10企業

21企業

11企業

9

24企業

10企業

14企業

6企業

10

36企業

18企業③

18企業

6企業

11

70企業②

25企業②

45企業②

25企業②

12

23企業

8企業

15企業

8企業

13

11企業

2企業

10企業

7企業

 注)①②③④の記号は,回答数の多い順位を示す。

 

【分析】

 「障害者雇用を促進するために,今もっとも必要と思われるもの」について,「達成企業」と「未達成企業」で見る。

 「達成企業」の上位は,第1位「2.試行(トライアル)雇用の充実を図る」(27企業),第2位「11.企業内の職務の見直しや職域の拡大と施設設備の改善を図る」(25企業),第3位「10.特定求職者雇用開発助成金の額を増額する」(18企業)である。

 「未達成企業」の上位は,第1位「2.試行(トライアル)雇用の充実を図る」(55企業),第2位「11.企業内の職務の見直しや職域の拡大と施設設備の改善を図る」(45企業),第3位「1.職場適応援助者(ジョブコーチ)を充実(増員等)させる」(34企業)である。

 0人企業」の上位は,第1位「2.試行(トライアル)雇用の充実を図る」(26企業),第2位「11.企業内の職務の見直しや職域の拡大と施設設備の改善を図る」(25企業),第3位「1.職場適応援助者(ジョブコーチ)を充実(増員等)させる」(19企業)で,「未達成企業」と内容・順番とも同一である。

 「企業全体」の上位は,第1位「2.試行(トライアル)雇用の充実を図る」(82企業),第2位「11.企業内の職務の見直しや職域の拡大と施設設備の改善を図る」(70企業),第3位「1.職場適応援助者(ジョブコーチ)を充実(増員等)させる」(48企業)である。

 「達成企業」と「未達成企業」を比べると,第1位と第2位の項目の内容と順番は同一である。ただし,第3項目で,「達成企業」は,「10.特定求職者雇用開発助成金の額を増額する」が選択され,「未達成企業」は,「1.職場適応援助者(ジョブコーチ)を充実(増員等)させる」が選択された点が異なる。

 なお,「その他」の項目内容(記述)は,「障害者雇用の機会の拡大(合同面接会の回数を増やす)」「社会全体の雇用の拡大(景気の回復)」「雇用体力がある企業への後押し(赤字会社では難しい)」等があった。

 

3・11 今後の方針

Q11 貴社の今後の方針についてお聞かせください。

   1.障害者を雇用していきたい

   2.雇用する予定はない

   3.その他(                              )

 

表3・11 今後の方針

回答項目

企業全体

(252企業)

達成企業

(102企業)

未達成企業

(0人企業を含む)

(150企業)

0人企業

(80企業)

障害者を雇用

していきたい

97企業

(38%:97/252)

31企業

(30%:31/102)

66企業

(44%:66/150)

25企業

(31%:25/80)

雇用する

予定はない

80企業

(32%:80/252)

47企業

(46%:47/102)

33企業

(20%:33/150)

23企業

(29%:23/80)

その他

57企業

(23%:57/252)

16企業

(28%:16/57)

(16%:16/102)

41企業

(72%:41/57)

(27%:41/150)

24企業

(56%:24/41)

(30%:24/80)

未記入

18企業

8企業

10企業

7企業

 

【分析】

 今後の障害者雇用の予定について,「達成企業」と「未達成企業」で見る。

 「達成企業」では,「雇用する予定はない」(46%)が「障害者を雇用していきたい」(30%)を上回っている。

 「未達成企業」では,逆に「障害者を雇用していきたい」(44%)が「雇用する予定はない」(20%)を上回っている。0人企業」では,「障害者を雇用していきたい」(31%,25企業)も「雇用する予定はない」(29%,23企業)もほぼ同様の数値である。

 「企業全体」としてみると,今後の障害者雇用の予定については,「雇用していきたい」が全企業の38%,「雇用の予定はない」が32%と,「雇用していきたい」という企業が割合として上回ったが,けっして高くはない数値である。

 まとめると,「達成企業」と「未達成企業」で見ると,「障害者を雇用していきたい」では,「未達成企業」(44%)の方が選択率が高く(「達成企業」は30%),「雇用する予定はない」では,「達成企業」(46%)の割合が高く(「未達成企業」は20%)となっている。 ただし,「未達成企業」の中でも「0人企業」は,障害者雇用に慎重な姿勢(障害者を雇用していきたい:31%)が窺えた。

 なお「3.その他」の項目を選択した企業は,全体の企業の23%(57企業)あった。その57企業の内訳は,「達成企業」16企業(「達成企業」の16%),「未達成企業」41企業(「未達成企業」の28%)で,未達成企業の方が,数的にも割合的にも多かった。「未達成企業」中,「0人企業」は24企業(「未達成企業」中の56%)だった。「その他」の内容(記述)は,「達成企業」では,「法定雇用率を達成する範囲で雇用する(6企業)」「継続雇用もなかなか大変」「その都度検討」等の記述があり,「未達成企業」では,「平成18年4月からの定年延長又は再任用等の措置をとることが義務付けられることと,障害者雇用との調整が必要となる」「仕事上事務以外でできる仕事がない。そのため,社会福祉法人自立奉仕会茨城福祉工場を通して障害のある人に仕事をしてもらっている」「障害者を雇用できる環境づくりを検討する」「現在の事業状況では,障害者雇用を促進するための改善を図る余裕がないことから,現状の中で,障害者雇用を考える場合,非常に限られた障害度の者について採用を考えざるを得ない」「法定雇用率は達成させていきたい」等であった。

【先行研究との関連】

 2002年11月に実施された「企業の障害者雇用に関する意識調査」1)によれば,「今後,障害者を増員,もしくは新規で雇入れようとお考えですか?」との問いに「はい」と答えた企業(56.2%,109社)であり,そのうち80.2%がその理由を「法定雇用率を満たすため」としている。これは,本アンケート調査の「障害者を雇用していきたい」では,「未達成企業」(44%)の方が選択率が高くなっている結果を支持する理由である。

 1)株式会社パソナ広報企画部「企業の障害者雇用に関する意識調査」(調査期間:2002年11月8日〜25日,サンプル:194,ホームページp.kohokikaku@pasona.co.jp)

 

3・12・1 達成企業から未達成企業へ

Q12 現在,5割を超える(55.5%)企業が,未達成企業となっています。それらの企業に伝えたいことはなんですか? 自由にお書きください。

 

【回答】

「達成企業」から「未達成企業」へ伝える自由記述への「記入あり」企業は,30企業(29 %:30/102)で,「記入なし」は71企業(70%:71/102)であった。

 

3・12・2 未達成の理由

Q12 あなたの企業で法定雇用率(1.8%)が「未達成」なのはどうしてですか?

    その理由をお聞かせください。

 

【回答】

 「未達成企業」への理由を問う自由記述への「記入あり」企業は,108企業(72%:108/150)で,「記入なし」は41企業(27%:41/150)であった。72%の「未達成企業」が法定雇用率未達成の理由を記述で答えた。

 

3・13 未達成の具体的理由(選択)

Q13 あなたの企業で法定雇用率が未達成なのは,どのような理由からですか?

    あてはまるものすべてに○をつけてください。

   1.職場の環境(設備など)が整備されていない

   2.障害者に合った仕事がない

   3.障害者の労働意欲や作業態度に不安がある

   4.雇っても企業にメリットがない

   5.雇入れた後のケアをする体制がない

   6.障害者雇用制度が不十分だから

   7.経営方針にない(社長の方針にない)

   8.特に理由はない

   9.その他

 

表3・13 法定雇用率未達成の理由

項      目

未達成企業

(0人企業を含む)

0人企業

1.職場の環境(設備など)が整備されていない

71企業②

48企業②

2.障害者に合った仕事がない

98企業①

57企業①

3.障害者の労働意欲や作業態度に不安がある

27企業

11企業

4.雇っても企業にメリットがない

7企業

3企業

5.雇入れた後のケアをする体制がない

51企業③

32企業③

6.障害者雇用制度が不十分だから

15企業

7企業

7.経営方針にない(社長の方針にない)

3企業

2企業

8.特に理由はない

4企業

1企業

9.その他

19企業

9企業

 注)①②③の記号は,回答数の多い順位を示す。

 

【分析】

 「未達成企業(0人企業を含む)」の理由の上位3位は,1位「2.障害者に合った仕事がない」(98企業),2位「1.職場の環境(設備など)が整備されていない」(71企業),3位「5.雇入れた後のケアをする体制がない」(51企業)であった。

 「0人企業」の順番は,1位「2.障害者に合った仕事がない」(57企業),2位「1.職場の環境(設備など)が整備されていない」(48企業),3位「5.雇入れた後のケアをする体制がない」(32企業)であった。

 「未達成企業(0人企業を含む)」と「0人企業」との比較をすると,上位3項目の内容と順位は,同一であった。

 なお「9.その他」の項目内容(自由記述)は,「安全管理の不安」「人員の削減を含めた生産性向上,効率アップ,合理化とは反対の活動」「求人機会がない」「経営が苦しい」等であった。

 

【補足】

 アンケートの欄外に,「会社の決算で180億円利益を出している会社と赤字でまともに賞与も支払えない会社で同じ1.8%の義務化は実体としては,難しいと思う」「障害者を受け入れられる現場の職長さんのモチベーションを上げる労務管理教育を公的機関で実施してほしい。一般的な労務管理教育は,2〜10万円する/一人。労基協会1)で1万2千円/一人。零細企業には,少額で指導を頂きたい」との意見が付されていました。

注1)県内8労働基準監督署単位で設置されている地区労働基準協会のこと



   三 ま と め


1 有効回答企業

(1)     有効回答企業数(252企業)は全企業数(895企業)の28%である。

(2) 障害者雇用達成状況別に見ると,達成企業(367企業)の有効回答率(28%,102企業)も未達成企業(528企業)の有効回答率(28%,150企業)も,同様の回答率を示した。

(3) 従業員規模別に見ると,数値的に最も多いのは「100人〜299人」の企業で134企業,次いで「56人〜99人」の企業で73人だった。回収率(同規模の企業に占める割合)では,最も高いのは,「500人〜999人」の企業で47%(17/36企業),次いで「1000人以上」の企業で33%(7/21企業)だった。

(4) 業種別に見ると,回答数から数値的に多い順に「製造業」(88企業),「医療・福祉」(42企業),「サービス業」(34企業),「卸売・小売業」(30企業)である。回収率では,「農・林・漁業」(200%)と「電気・ガス・水道業」(133%)が100%を超えているが,これは記入者と届出者との認識の違いによる結果だと推測される。次いで,回収率が高いには「飲食店・宿泊業」で75%(9/12企業)だった。

 

2 障害者雇用企業

(1) 有効回答企業(252企業)で障害者を「雇用している」企業は68%(171企業),「雇用していない」企業は32%(80企業)だった。

(2) 有効回答企業(252企業)中,障害者の法定雇用率の「達成企業」は102企業で40%,「未達成企業」は150企業で40%だった。本アンケートの基礎データとなる2004年6月1日現在の「雇用率達成企業の割合」が41.0%(367/895企業)だから,ほぼ近い数値である。

(3) 「未達成企業」の理由は,1位「2.障害者に合った仕事がない」,2位「1.職場の環境(設備など)が整備されていない」,3位「5.雇入れた後のケアをする体制がない」であった。

(4) 障害別に雇用数を見ると,身体障害(148企業)を雇用する企業が多く,知的障害は約3分の1の54企業だった。障害者の雇用数では,「2人〜5人」(78企業)が最も多く,次いで「1人企業」(71企業)だった。障害別と雇用者数別に企業数を見ると,最も多かったのは「雇用数1人企業」で,身体障害で76企業(51%,76/148企業:身体障害者を雇用する企業),知的障害で27企業(50%,27/54:知的障害を雇用する企業),精神障害で4企業(67%,4/6:精神障害を雇用する企業)を占めた。

 

3 雇用障害者

(1) 雇用障害者を雇用形態で見ると,正社員として雇用いるのは125企業で,パートとして雇用しているのは77企業で,正社員としてやとっている企業数の約6割(62%:77/125)にあたる。社員数で見ると,正社員数は299人,パートは199人で,総社員数の約6割(60%:299/498〈299+199〉)が正社員で,約4割(40%:199/498)がパート雇用だった。

(2) 週当たりの労働時間数を見ると,最も多いのが「40時間未満」で企業の60%にあたり,次いで「45時間未満」(20%),「30時間未満」(14%)だった。雇用者数で見ると,最も多いのは,同様に「40時間未満」で64%,次いで「30時間未満」(16%),「45時間未満」(16%)だった。先行研究(厚生労働省「平成15(2003)年度障害者雇用実態調査」)では,週所定労働時間は「週30時間以上」が80%を越えている結果が得られているが,本アンケート調査によって,「週30時間以上」のうちのほとんど(75%:114/152)が「40時間未満」であることがわかった。

 

4 雇用傾向

(1) 障害者の雇用期間を見ると,「10年以上」の企業が89企業(32%)ともっとも多く,雇用者数でも206人(雇用者数全体の42%)ともっとも多かった。他(「1年未満」「2年未満」「3年未満」「5年未満」「10年未満」)は,いずれもほぼ10%台で,同様の比率を示している。

(2) 過去1年間に障害者を採用した企業は,53企業で,回答企業全体の31%であった。雇用率達成状況で分けて見ると,53企業のうち64%が「未達成企業」(34企業)で,「採用がなかった」企業(114企業)のうち69%は「達成企業」(79企業)が占めていた。障害者の新規採用は,「未達成企業」の方が高かった。

(3) 過去1年間に障害者の退職者を出した企業は,43企業で,回答企業全体の25%であった。雇用率達成状況で分けて見るとほぼ同数(「達成企業」20企業,「未達成企業」23企業)だった。「退職者がなかった」企業(123企業)のうち63%は「達成企業」(77企業)だった。退職者は,ほぼ「達成企業」「未達成企業」で同数出ている。また,退職者を出していないのは,「未達成企業」(37%,46企業)より「達成企業」(63%,77企業)の方が多かった。

 

5 障害者雇用への配慮事項

(1)   障害者を雇用している企業で,障害者の採用にあたって,配慮したことが「ある」企業は,回答企業数の約半数(56%)だった。

(2)   配慮事項は,第1位「12.社員への障害に対する理解促進」,第2位「5.工程の単純化等職務内容の配慮」,第3位「7.業務遂行を援助する者の配置」だった。

 

6 障害者雇用の理由

(1) 障害者を雇用している企業で,障害者を採用した理由は,高い順に第1位「2.企業の社会的責任として」,第2位は「1.法律で定められているから」,第3位「5.会社の求めるニーズに適した人材だったから」だった。

 

7 障害者雇用制度の周知度

(1) 有効回答企業のほとんど(92%)は,法律で障害者を雇う義務が定められていることを知っていた。

(2) 障害者を雇用している企業は,特別に配置(選任)する担当者を置くことになっている。

・「1.障害者雇用推進者」は「56人以上の企業」では「障害者雇用推進者を選任するよう務めなければならない」

・「障害者生活相談員は「障害者を5人以上雇用する」企業に「選任する必要」がある

(『障害者の雇用支援のために―事業主と障害者のための雇用ガイド―平成16年』厚生労働省,独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構より)

障害者を雇用している企業で,「特別に配置(選任)する担当者」が「いる」企業は28%で,「いない」企業は69%でった。「いる」と答えた企業のうちの59%が「1.障害者雇用推進者」で,25%が「2.障害者職業生活相談員」だった。上記の規定を考えると,低い数値で,制度が周知されていないことがわかる。

(3) 各種援助制度(12項目)の利用状況と周知度について調べた結果,「利用したことのある制度」の上位3位は,1位「7.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)」,2位「3.障害者試行雇用事業(トライアル雇用)」,3位「8.障害者雇用調整金・報奨金」(24企業)であった。

 反対に,「知らない制度」のワースト3は,ワースト1位「6.特例子会社制度」(111企業),ワースト2位「12.重度障害者雇用促進融資」(98企業),ワースト3位「5.就労支援機器の貸出事業」(96企業)であった。全体的傾向として,各種助成制度の存在が,周知されていないことが窺えた。

 

8 関係機関の利用度

(1) 障害者を雇用している企業で,募集・採用する際に利用した機関は,「1.ハローワーク(公共職業安定所)」が企業の78%の利用あった。次いで「6.学校・各種学校」(18%),「10.知人」(15%)であった。

(2) すべての企業に関係機関の利用度を聞いたところ,利用企業の多い3機関は,「1.ハローワーク(公共職業安定所)」(192企業),「3.茨城県雇用開発協会」(70企業),「2.茨城障害者職業センター」(25企業)であり,利用が多い機関と利用企業が少ない機関に分化された。「利用したことがある機関」が「ない」より多い機関は,「「1.ハローワーク(公共職業安定所)」のみであった。

 

9 障害者雇用促進のために

 

表 障害者雇用促進のための条件

質問

上位項目2)

達成企業

未達成企業1)

0人企業

企業全体

障害者の雇用を増やすために必要な条件

2.採用時に適性・能力を充分に把握する

第1位

61企業

第1位

96企業

第1位

55企業

第1位

157企業

1.社内において障害についての理解を得る

第2位

41企業

第2位

77企業

第2位

44企業

第2位

118企業

9.職場の安全面の配慮をする

第2位

41企業

第4位

62企業

第3位

38企業

第3位

103企業

3.会社内に適当な仕事を作る

第3位

24企業

第3位

69企業

第3位

38企業

第4位

93企業

8.施設・設備・機器の改善をする

第3位

24企業

56企業

33企業

80企業

関係機関から支援して欲しいこと

5.障害者雇用支援設備・施設・機器の設置のための助成・援助

第3位

24企業

第1位

67企業

第1位

44企業

第1位

91企業

15.助成金受給手続きの簡略化

*第1位

30企業

第2位

47企業

*21企業

第2位

77企業

10.障害者に対する能力向上のための訓練の実施

第2位

26企業

第3位

43企業

第3位

23企業

第3位

69企業

7.具体的な雇用ノウハウについて相談できる窓口の設置

15企業

*第3位

43企業

*第2位

28企業

58企業

1.障害者雇用に関する広報・啓発

16企業

41企業

第3位

23企業

57企業

障害者雇用で今もっとも必要なこと

2.試行(トライアル)雇用の充実を図る

第1位

27企業

第1位

55企業

第1位

26企業

第1位

82企業

11.企業内の職務の見直しや職域の拡大と施設設備の改善を図る

第2位

25企業

第2位

45企業

第2位

25企業

第2位

70企業

1.職場適応援助者(ジョブコーチ)を充実(増員等)させる

15企業

第3位

34企業

第3位

19企業

第3位

48企業

10.特定求職者雇用開発助成金の額を増額する

*第3位

18企業

18企業

6企業

36企業

注1)「障害者雇用数が0人企業」を含む。

 2)上位項目は「企業全体」の上位項目の順番で示した。

 

(1) 障害者の雇用を増やすために必要な条件の上位は,第1位「2.採用時に適性・能力を充分に把握する」,第2位「1.社内において障害についての理解を得る」,第3位「9.職場の安全面の配慮をする」,第4位「3.会社内に適当な仕事を作る」であった。「達成企業」も「未達成企業」も同様の上位項目を示した。

(2) 関係機関から支援して欲しいことの上位は,第1位「5.障害者雇用支援設備・施設・機器の設置のための助成・援助」,第2位「15.助成金受給手続きの簡略化」,第3位「10.障害者に対する能力向上のための訓練の実施」であった。

(3) 「障害者雇用を促進するために,今もっとも必要と思われるもの」の上位は,第1位「2.試行(トライアル)雇用の充実を図る」(82企業),第2位「11.企業内の職務の見直しや職域の拡大と施設設備の改善を図る」(70企業),第3位「1.職場適応援助者(ジョブコーチ)を充実(増員等)させる」(48企業)である。

(4) 「障害者の雇用を増やすために必要な条件」「関係機関から支援して欲しいこと」「障害者雇用を促進するために,今もっとも必要と思われるもの」全体を通して,「達成企業」「未達成企業」「0人企業」の選択項目を見ると,いずれもほぼ同様の上位項目が選択されている。ただし,順番は異なっている。この順番の違いに,「障害者雇用率達成状況の違う企業」により,異なるニーズの存在が推測される。

 例えば,関係機関から支援して欲しいことで,「達成企業」の第1位は「15.助成金受給手続きの簡略化」となっている。「未達成企業」では,3位に「7.具体的な雇用ノウハウについて相談できる窓口の設置」となり,「0人企業」では,「15.助成金受給手続きの簡略化」上位項目から除外され,「7.具体的な雇用ノウハウについて相談できる窓口の設置」が第2位と高い位置づけとなっている。

 「達成企業」では,第1・2位は同じだが,続く第3位に,新たに「10.特定求職者雇用開発助成金の額を増額する」(18企業)が選択された。

 「障害者雇用を促進するために,今もっとも必要と思われるもので,達成企業で「10.特定求職者雇用開発助成金の額を増額する」が上位(第3位)に入っている。

 

10 障害者雇用の今後

(1) 今後の障害者雇用の予定は,「雇用していきたい」が全企業の38%,「雇用の予定はない」が32%と,「雇用していきたい」という企業が割合として上回った。「達成企業」と「未達成企業」で見ると,「障害者を雇用していきたい」では,「未達成企業」(44%)の方が選択率が高く(「達成企業」は31%),「雇用する予定はない」では,「達成企業」(46%)の割合が高く(「未達成企業」は22%)となっている。

 

おわりに

 障害者雇用の担当部署である茨城労働局やハローワークなどの行政機関が障害者雇用のための推進役として「未達成企業」に対する企業指導を強化していかなければならないだろう。

 本アンケート調査結果から,障害者雇用の推進のために,以下のことを提案します。

(1)  各種障害者雇用制度の周知を徹底する。障害者生活相談員の設置が周知されていない。まずは,障害者雇用度の高い「未達成企業」を対象とした「障害者雇用制度の説明会」を開催してはどうだろうか。

(2)   ハローワークは認知度に伴ってさすがに利用率も高くなっているが,茨城障害者職業センター(所在地:友部町鯉渕)など関係機関の利用率を高める必要があるものと考えられるので,機会を捉えて関係機関の存在意義を含めた周知が必要であると考えます。

(3)   「達成企業」「未達成企業」「0人企業」のニーズに応じた決め細かな施策の策定が必要であり,「達成企業」と「未達成企業」等で求めている内容(上位3項目程度)は同様のものであるが,求める度合い(ニーズ)の違いがあることを認識する必要があると考えます。

(4)   茨城県においては、「特例子会社」が存在しないという現状を認識し、全国的にも数多く存在する工業団地などに誘致または設置する企業指導が必要ではないかと考えます。

(5)   法定雇用率未達成企業の理由でもっとも多いのは「障害者にあった仕事がない」であることを考えると,関係諸機関で職場を見て,適当な仕事を見つけるような役割と人材が求められる。

 なお、東京労働局では、民間企業での障害者雇用を進めているハローワークにおいて、率先して知的障害者を雇用することにより、官公庁の知的障害者雇用への取組みを促進せるさ取組みをしています。 また、ハローワークにおいて、培った知的障害者雇用のノウハウを公開することにより、官公庁での知的障害者雇用の普及を目指すという努力をしています。

 最後に、本アンケート調査結果が,障害者雇用の改善に,少しでも役立つことを願っています。

 

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